日本医真菌学会雑誌
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非侵襲性肺アスペルギローシスの病態
倉島 篤行
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1997 年 38 巻 2 号 p. 167-174

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抄録

一般的に言って,非侵襲性肺アスペルギローシスは,その経過の長さや自覚症の乏しさから非活動的であり,静的な病態として把握されている.このような見地から,近年,比較的急速に進展する病態に対して“Semi-Invasive Pulmonary Aspergillosis”や“Chronic Necrotizing Pulmonary Aspergillosis”等の新しい疾患呼称が定型的aspergillomaに対置する形で,提唱されてきた.
しかし,これらの新たな疾患呼称は,不十分な定義から臨床現場に用語の混乱や不適切な適用をもたらしている.また,この定型的aspergillomaそのものの進展経過,成立過程も未だ十分に検討されているとは言えない.
我々は,先行肺疾患の治癒過程から本症成立までの全経過を追跡できる41例の非侵襲性肺アスペルギローシスを対象に,その進展経過を画像的に解析した.本症の全経過は10stepに区分可能であり,そのstep毎の到達日数をプロットした.この結果は,本症は単純に一方向の進展を示すものではなく,増悪,寛解を繰り返しながら進展し,末期には感染性肺疾患としては異例なほど広範囲,破壊性の病態を示し致死的な疾患である事を示した.本症進展の経過には,ダイナミックな過程が内包されており,“Semi-Invasive”typeという独立した病型提唱は本症の病態把握に混乱を招くと考えられた.現行の抗真菌剤では既にfungus ball形成に至ってからでは不十分な効果しかなく,本症治療では早期診断,早期治療の重要性が確認された.

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