日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
在宅療養要介護高齢者の介護環境ならびに生命予後,入院,介護施設入所リスクの性差
葛谷 雅文長谷川 潤榎 裕美井澤 幸子平川 仁尚広瀬 貴久井口 昭久
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2010 年 47 巻 5 号 p. 461-467

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抄録

目的:要介護認定を受けた在宅療養中の高齢者の性別による身体機能,疾病背景,介護環境(生活環境,介護者の有無ならびに続柄,サービス使用状況),さらに3年間の生命予後,入院,施設入所の相異を明らかにする.方法:名古屋市在住で要介護認定を受け在宅療養中の高齢者1,875名,さらにその主介護者1,568名を対象にした縦断調査(the Nagoya Longitudinal Study for Frail Elderly)の登録時のデータならびに3年間の死亡,入院,介護施設への入所に関する縦断的データを使用した.結果:登録された要介護者の性別構成は女性(66.3%)が男性(33.7%)の約2倍存在していた.男性に比較して女性要介護高齢者の平均年齢は高く(女性:81.5±7.5(SD)歳,男性:78.8±7.6(SD)歳,p<0.001),独居が多く(女性:26.2%,男性:14.6%,p<0.001),主介護者が配偶者である割合が男性要介護高齢者に比較して低かった(女性:22.1%,男性:73.6%,p<0.001).女性要介護高齢者は訪問介護サービスの利用率が高く(女性:48.8%,男性:43.2%,p=0.021),また重篤な併存症の有病率は男性に比較して低く(男性vs女性,脳血管疾患:46.6% vs 28.3%,<0.001;慢性閉塞性肺疾患:9.9% vs 5.9%,p=0.003;悪性腫瘍:12.9% vs 7.3%,p<0.001),骨折の罹患率(過去5年間)が高かったが(27.4% vs 14.7%,p<0.001),3年間の死亡率,入院率は男性要介護高齢者よりも女性で低かった(男性vs女性%,死亡率:31.3% vs 20.6%,p<0.001;入院率:48.6% vs 39.9%,p<0.001).介護施設への入所は男性よりも高かった(5.2% vs 8.4%,p=0.011).Cox比例ハザード解析では男性と比較した女性要介護者の死亡,入院,施設入所のハザード・リスク(95%信頼区間)は単変量解析でそれぞれ0.61(0.51~0.74),0.76(0.66~0.88),1.48(1.00~2.19)で,多変量解析ではそれぞれ0.51(0.39~0.66),0.83(0.69~0.99),1.19(0.73~1.93)であった.結論:在宅療養中の要介護高齢者は女性が多く,主介護者の続柄など介護環境に性差が存在する.さらに女性要介護高齢者では男性よりも3年間の死亡率は低いものの,介護施設へ入所する率が多いことが明らかとなった.

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© 2010 一般社団法人 日本老年医学会
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